一つは,完全学校週5日制が実施されたこと。
そして,もう一つが学校の評価制度が相対評価から絶対評価に変わったことだったのです。
のりティー
質問母さん
ここをきちんと理解した上で,お子さんの成績を見なければいけません。
例えば,40人の生徒にテストを受けてもらい,結果を得点順に並べて,下の図のように評価をしたとすれば,相対評価であるといえます。
点数分布の割合 | 3% | 4% | 9% | 15% | 19% | 19% | 15% | 9% | 4% | 3% |
十段階評価 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
人数 | 1 | 2 | 3~4 | 6 | 7~8 | 7~8 | 6 | 3~4 | 2 | 1 |
図1 相対評価
相対評価では,40人学級だと10がつけられるのは1人だけ。9をつけられるのは2人で,8は3~4人までとなります。もし,100点を取った生徒が4人いたらどうなるでしょう? 1人にしか10をつけることができないので,日頃の学習状況(小テストの結果や宿題の提出状況など)で10をつける1人を決め,残りの2人には9を,4人の中で一番基準の低かった人には8がつくことになります。この方法では,前回30点の子が努力をして100点を取っても,忘れ物が多い子や生活態度が悪い子が100点を取っても,真面目な子の100点には勝てないことになります。週休2日制になる前に小学・中学・高校時代を過ごした保護者の方ならば,どれだけ頑張っても,その成果が成績に反映されないと感じたことがあることでしょう。こんな状態が続けば,生徒は学習意欲をなくしてしまいます。これが一つの原因となり,評価方法は絶対評価に変わったのです。
例えば,100点満点のテストを行って,下の表のように評価をしたとすれば,絶対評価であるといえます。
テストでの得点 | 0~9 | 10~19 | 20~29 | 30~39 | 40~49 | 50~59 | 60~69 | 70~79 | 80~89 | 90~100 |
十段階評価 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
図2 絶対評価
先ほど同様に40人学級の中で,テストを受けたとします。90点以上の生徒が10人いればその10人に10がつき,20人いればその20人に10がつきます。もし,90点以上の生徒が1人もいなければ,10の生徒は0人になってしまいますし,クラス全員が90点以上であれば全員が10になってもおかしくはないのです。自動車免許の試験や検定試験はこの典型的な例と言えるでしょう。しかし,学校の成績で全員に10がつくことはほぼありません。
何故か?絶対評価には,到達度評価と認定評価の2種類があります。日本の公立学校で現在用いられているのは,到達度評価による観点別学習状況評価だからなのです。
もう少し詳しく説明すると,到達度評価では2つの「ひょうかきじゅん」を用います。
1つは,設定した到達目標(=観点・内容)を示す,「評価規準」で,もう1つはその到達目標をどの程度クリアしたかを判断する指標(=目安)を示す「評価基準」です。前者を「のりじゅん」,後者を「もとじゅん」と呼んで区別することがあります。
例えば,これから必修化される「プログラミングの授業」で考えると,その授業の目標がいくつか決められます。「各種ハードの違いを覚える」,「キーボードの操作を覚える」,「基本ソフトの使い方を覚える」等々で,更にキーボードの操作は「文字を入力できる」「ドラッグ&ドロップやカット&ペーストができる」,「プログラム言語を覚える」のように細分化し,いくつもの評価観点を作る,これが「規準(のりじゅん)」です。
これに対し,それぞれの「規準」をどれだけ達成したかを測るのが「基準(もとじゅん)」です。「文字を入力できる」という規準に対し,「1文字1文字確認しながら入力できる」,「1分間に50字入力できる」,「ブラインドタッチで入力できる」などの「できる」LVの違いを明らかにするものが「基準」ということです。
このように評価規準や評価基準を明確にすれば,評価の根拠,理由が開示でき,生徒自身にも自分がどこまで達成できているのかが確認できるという利点があります。しかし,その一方で,評価規準や評価基準の設定や判断は教師によるところが大きいため,同じ成績でも,学力差が激しくなる危険性があるのです。
例えば,常に高校入試や確認テストを意識して厳しい評価規準を設定した先生と,自分の教えている生徒たち全員が達成できるような問題で自信をつけさせたいと考えて評価規準を設定した先生がいたとします。そうすると,前者では多くの生徒が規準を達成できず,後者はほぼ全ての生徒が達成できた,というような状況は十分起こりうるのです。そうしたことが起きないように,学校間,教員間で,評価規準・評価基準の設定方法や,評価の精度についての情報交換が求められているのです。
クラスの他の生徒の出来次第に関係なく、本人の出来で成績が評価されるものであるが、評価基準が、教師によって公開されていないという難点がある。つまり、基準は教師が認めたかどうかによるというわけである。「充分な学習がなされたものと認定されたか」ということである。教師は、決して悪意があって公開していないのではなく、どういうことを学ばなくてはならないかは、充分に教えてあるのだが、それをどの程度、理解し、自分のものにしているか、その深さが評価の対象になる場合、それは計測、測定できるようなものではないため、小テストや評価テストの点数としての換算が困難なため、こうした認定という仕方になる。
こうした評価がなされるのは、道徳や音楽での表現力、生活態度など、学校の教科外で茶道、華道、舞踊などの伝統的な芸事、スポーツのプレイの技術などがある。
成果が振るわないと、先生の主観、お気に入りのひいき等と、反抗的な態度を取る生徒も出てくることがある。これ一辺倒ではなく、他の教育評価の手法との併用、混合での使用が望ましい。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
結局のところ,絶対評価でも相対評価でも同じ学力なのに学校によって成績が違って不公平になるというデメリットがあります。
成績表をつける際の対象となる中間テストや期末テストは,学校によってテスト範囲が違いますし,テスト製作者の先生によっても難易度の差が生じます。試験範囲が狭く簡単なテストを受けた場合と,広い試験範囲で難しいテストを受けた場合では点数のばらつき具合も異なります。それで同じ評価が付けられるはずがないのは分かっていただけることと思います。
推薦・AO入試による大学入試合格者の割合が増えてきた今日,これは非常に問題になってきました。
実際,高校数学の中間・期末テストの問題で
(1)学校で使用している問題集の決められた問題(10問くらい)が試験範囲として提示され,その中の5,6問がテストに出る
(2)学校で使用している問題集の決められた範囲(数十ページくらい)が試験範囲として提示され,その中の5,6問がテストに出る
(3)学校で使用している問題集の決められた範囲(数十ページくらい)が試験範囲として提示され,その中から数問,オリジナル問題や県模試過去問から数問が出る
などといった違いが学校間,クラス間によってあります。出題範囲も5単元程度の差があることもあるのです。しかしながら,大学入試に送る評定値には,そのような違いを伝える術はありませんでした。ですから,え?と驚くような学力の子が,偏差値の高い難関大学に推薦入学したかと思えば,その子よりも学力の高い子が一般入試で落とされるといった摩訶不思議な現象が当たり前のように起こってきたのです。
そして,昔よりも良い成績が取りやすい状況にある可能性が高いのだと知っておかなくてはならないのです。
大学入試は,各大学の教室の数や先生の人数が限られているので,何人でも合格させるというわけにはいきません。逆に,「今年は新入生はなし!(受験者全員,学力不足だから)」というわけにもいきません。
結局,自分の精一杯ではなく,行きたい大学の水準を満たしているかを意識して勉強しないといけないのです。
ここまでお付き合いいただいた保護者の方には2つばかり,新たな疑問が生じているのではないでしょうか?
1つは,どのようにして公平な成績を担保するのか?
1つは,大学入試に送る評定値の違いを伝える術はありませんでした。と過去形なのは何故か?
答えは『偏差値』と『教育改革』にあります。是非,そちらも御一読ください。
のりティー